2015年3月17日火曜日

Félicia Atkinson “A Readymade Ceremony” (Shelter Press)


きょうの届きもの!



Félicia Atkinson “A Readymade Ceremony”
フランスのShelter Pressから我らがフェリリの新作です。
わたしのところをずっと読んでくださってる方にはもはやおなじみ、だとおもうけれども、おととしはUmor Rexからのベスト盤をその年のレコードのほうベストにいれたり、カセットのほうも5位とか。
ずっとさかのぼるとポストクラシカルなSylvain Cheaubveauと共作だしたり、壊れたフォークやらやっていたんだけれど、本人が “Oregon” でかいていたのを読むと、ポートランド旅行で精神とからだを病んでしまい、音もかなり。
その旅行中につくったJe Suis Le Petit Chevalier名義ではノイズ、インダストリアル感すらある亡霊声飛び交う暗黒すぎるシンセ作品をShelter Press、Watery Starve、Digitalisなどから連発、本人名義ではCooper CultにHome Normal、Morcなどから、そしてわたしが手に入れた史上もっとも宝物カセットテープな木箱入りなんとかだしていて、こちらでも暗黒でより壊れたフォーク、ドローンを。プリペアードピアノやらもつかったりしてた。
LAのアートブックフェアに出品だけでなくライブしにいったりと、zineにインスタレーション、ドローイングもやっていて、。3年まえに買ったレコードの内袋には本人が絵をかいてたりとか。
京都のひとがまだTwitterいたころ、はじめてやりとりしたのって、たしかフェリリのことだった、その年でたフェリリのでどれがいっとう好きだったか? って。
とりあえず、ここ数年ずっと好きなひとのひとり。
ひさびさ新作です。
ジャケットからして、もうことしベスト。きょねんD/P/Iとカナダツアーまわったその後感が。内袋もしっかり文字がデザインされていて、白みがかったクリアヴァイナルと、一切隙なし。

で、音はというと。
本人名義は生音中心、JSLPCはシンセ中心、っていう認識だったんだけれど、ひさびさな作品だけあってか、ふたつの名義のよさをうまくあわせて、それを研ぎすましたかんじ。傑作すぎます。
Bandcampにかなりながい説明がありますので、読んでください。わたしは途中で疲れてやめました。

A面。
1曲目。
ずずずずと細やかな低い振動音と、機械的な金属音の連打の奥で、いままででいっとう声っぽい声でささやかなヴォーカル。もともとフォークなアルバム “La La La” で知ったけれども、そのときはかなり弱く弱くな声だったし。
2曲目、L'oile。目、ですね。バタイユの小説です。
立体的に声がとらえられたささやきポエトリーリーディングのうしろで、きらめくシンセ、そのことばのあいまからかなりの勢いで吹き上がるノイズ。耳をすまさねばききとれないことばと、それをさえぎるかのようなノイズ、耳は自然と注意力を増してゆき、中盤でいちど、語気が強くなり、どきりとします。そして、声のかさなり、ノイズも立体的な変化をみせながらな10分間。体験としてすごいです。

B面。
1曲目。
デジタルな処理がほどこされたフィールドレコーディングはじまりから、ぶつりと突如とぎれて、ゆがんだシンセが空中を飛び交い、そこにストリングス音色なドローンの重なり、そしてすべてがあわさったあとに残る、声。
2曲目。
残像反復ななか、唐突にクリアなピアノとスネアの音、うしろの残像は取り払われ、いきなり広い空間が広がって。そこにまた残像の反復も重なり、またピアノのみな。
3曲目。
ざらついた空気のなか、時折浮び上がるクリアなシンセのドローン、低いピアノの音、そしてポエトリーリーディング、そこにかつりかつりと打ち鳴らされる音は、Beatrice Dillonなどにも通じる、音を引いたテクノな感触もありながらで、たのしい。よくかんがえれば、あちらは物音を足して、こちらは物音からはじまってっていう。

すべて簡単なソフトウェアだけで録音さられたらしく、ローファイな、とはいうものの、いままでにないクリアなかんじがところどころに、それでいてしっかり暗黒で、でもすごく好きなShelter Pressからのカセットなときのように地下鉄のホームで亡霊とつぎつぎとすれちがうかんじとはちがうし、ふたたびなオレゴン録音な部分もあるけれど初期レコードのようにノイズにすべてが飲み込まれることもなく、いちどまっぷたつに分離してしまったじぶんの声、ことば、からだをひとつのところに取り戻して、ふたたびあるべき位置に配置してゆくようなしずかなよろこびが。とはいうものの、やっぱりこわいけれどね。最高です。


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